住宅に使われる屋根にはさまざまな種類があります。
屋根自体の形として和風の伝統的な屋根や三角屋根、平面な屋根など、事情や地域に合わせ多くの形があります。
そして用いられる屋根材も多くの種類があります。
建てられた時期による流行や、新築・リフォームそれぞれで多用されかるかどうか。
求められるメリットや地域、ご予算などで選択される屋根材は決まってきます。
今回はどんな屋根材が存在するのか、そしてその屋根材に必要なメンテナンス方法をご紹介します。
瓦
日本瓦(和瓦)
古くから使われる、粘土を成型し焼き上げた素材です。
よく目にする艶のある仕上がりのものは釉薬が塗られた瓦で、釉薬瓦といいます。
他にも燻された、いぶし瓦などもあります。
・断熱性が高い
・瓦自体のメンテナンスが不要
・高価
・割れることがある
メリットとしては、瓦の耐久性が50年ほどと非常に長持ちすることです。
塗装が不要で、メンテナンスフリーとなります。
しかしこれは「瓦」に対しての話で、瓦の下地である防水シートなどの耐用年数の方を先に迎えることが多く、そちらの交換工事が必要になることがあります。
その場合、瓦はまだ持つので、一度瓦をおろして下地の修理をし、再度同じ瓦を再利用する葺き戻し工事を行うことが多いです。
デメリットとして、重いことがあります。
屋根が重いと、家自体の重心の位置が地上から高くなり、地震で家がよく揺れるという点があります。
家の耐震性を損なうと言うのが一つのポイントになってしまい、あえて他の軽い屋根材に葺き替えると言う選択肢もあります。
他にも、棟を固定するための漆喰の劣化による漆喰工事などの棟工事や、
台風などで飛来物がきてしまい瓦が割れてしまい、一部だけ差し替えを行うこともあります。
・漆喰工事
・棟積み替え工事
・葺き替え工事
セメント瓦・モニエル瓦
セメント瓦はセメントを型に流し入れて乾燥させたものです。
モニエル瓦はヨーロッパ発祥のセメント瓦の一種で、セメントと砂を混ぜたコンクリートを固めたものになります。
・デザイン性が高い
・塗装によるメンテナンスが必要
どちらも形や色に多様性があり、デザイン性が高いのが特徴です。
和瓦風や洋瓦風、明るい色から暗い色まで、建物を好みのデザインで作り上げることが可能です。
また、比較的取り扱い業者も多い点も安心です。
対して、日本瓦ほどではないものの重量があることがデメリットとして挙げられます。
そして、表面の塗装によって防水性を維持しているため、塗膜が剥がれてくる10年〜15年ほどで、
塗装のメンテナンスが必要になってきます。
もし劣化が進んだまま放置すると、割れや欠けが発生したり、
苔やカビが生え水が染み込みやすくなって雨漏りするリスクが高まっていきます。
・漆喰工事
・葺き替え工事
スレート屋根
現在でも新築などで使われる事が多い、薄い板状の屋根材です。
天然スレートとして本来岩を加工したものがありますが非常に高価で、
普及しているものは化粧スレート(人工スレート)というセメントを繊維素材にして加工したものになります。
スレート瓦とも言われますが、瓦とは異なります。
以前は石綿(アスベスト)が使用されていた時期もありますが、
割れなどの破損がない限り健康に影響はありません。
屋根材に含まれるアスベストは危険度が低いとも言われているのでまずはご安心ください。
(商品名や施工時期によってアスベストが含まれているか確認する事ができます。)
・比較的安価
・工期が短い
・定期的な塗装メンテナンスが必要
メリットとして、日本瓦やガルバリウム鋼板と比較すると低価格で施工が可能です。
また、日本瓦よりも軽い屋根材として耐震性にも優れます。
よく使われる屋根でもありますので、対応可能な業者も多いです。
・棟板金工事
・葺き替え工事
・カバー工法
セメント瓦とも同じですが、表面の塗装によって防水性を確立しているので、
塗膜が劣化してくる頃には防水性や低くなり、苔やカビ、割れ、反りなどが発生しやすくなります。
スレート自体の耐用年数は20~30年程度なため、1,2回ほど塗装によるメンテナンスを行なったのち、
葺き替えやカバー工法による屋根材の変更を含めたリフォームをする事が多いです。
薄い屋根材のため凹凸がなく、カバー工法による工事も可能です。
カバー工法は今の屋根の上から新たな屋根を被せる工事、葺き替えは一度今の屋根を撤去し新しい屋根を作る工事です。
カバー工法は撤去がないため廃材が少なく、工期も短いですが屋根が重くなったり、雨漏りが発生した時に二重になっていることで原因の特定が難しいです。また、重ねるということから凹凸のある屋根材の上には行う事ができません。
対して葺き替え工事は工事が長めですが一新する事ができます。
予算や求める効果などを比較し、どちらを行うか検討する必要があります。
他にも、スレート部分ではありませんが強風により棟部分の板金の釘が外れたりするなど、棟の修理が必要になることもあります。
金属屋根
トタン屋根
トタンは銅板に亜鉛メッキのある金属板です。
非常に軽く、取り扱いも簡単なので施工しやすいと言う利点があります。
瓦棒という細長い角材にトタンを巻き付けながら葺く手法が多く、瓦棒屋根とも言います。
物置や駐輪場の屋根などに見られる、波板という波打つ形のものもあります。
近年では工場の屋根や下屋根で見られる屋根材です。
(新築の戸建住居にトタンが使われる事は現在ではありません。)
・軽量
・錆びやすい
メリットとして、低価格で施工できるとう点が大きいです。
薄い金属板なので軽く、耐震性にも優れています。
ただ金属板なので熱を通しやすく、雨水の音が鳴りやすい、錆びやすいなどのデメリットはあります。
・塗装工事
・カバー工法
軽い錆や色褪せであれば塗装でのメンテナンスが可能です。
錆が進行し、穴が空いてしまったりすると根本的な修理が必要になります。
トタンを一度剥がし、葺き替えを行ったり、
下地の劣化が進んでいなければ、カバー工法というトタンの上から新たに屋根を被せる修理も可能です。
大体が平たいトタンなので、上から重ねる手法をとることができるのです。
ガルバリウム鋼板
金属屋根として現在主に使われるのはガルバリウム鋼板です。
これは、薄い金属板の裏側にウレタンフォームなどの断熱材を張り、それをセットとして扱う屋根材になります。
・防炎性・防水性が高い
・耐用年数が長い
・デザイン性が低い
・凹みやすい
ウレタンフォーム自体も軽いため、トタンの利点であった軽量な点は生かしつつ、
デメリットであった断熱性や遮音性を向上させた屋根材です。
錆びやすさについては他の金属以外の屋根材よりは可能性がありますが、
アルミニウムと亜鉛の合金による金属メッキで、トタンよりも大幅に耐久性や防錆性が上がりました。
最近では新築でも使用されることが増えてきましたが、主にリフォームで使用される屋根材として選択肢に上がることが多いです。
一般的に重いと言われる日本瓦に対して重量が1/6~1/10程度と大幅に軽減されるので、
弊社では特におすすめしている屋根材になります。
デメリットとしては、金属板なので凹みやすかったり、瓦のようなカラフルさやデザイン性はあまりありません。
洗浄としてよく外装で使用される高圧洗浄などは、凹む原因にもなる場合がありますので、問題がないか確認しましょう。
また、他の安価な屋根材と比較すると少々割高にはなります。
耐用年数が30~50年ほどとかなり長いので、長期的に考えたら良いコストパフォーマンスになるかと思います。
・塗装
・洗浄
基本的に日本瓦のようにメンテナンスフリーと言われる屋根材になりますが、
屋根材同士の繋ぎ目にあるコーキング(密閉させるためのゴムのような部分)が劣化していた場合、
10年程度を目安に確認・打ち替えを行います。
特に海沿いなど、塩害のありそうな地域などでは塗装や洗浄などのメンテナンスが必要になる場合もあります。
アスファルトシングル
アスファルトシングルは、ガラス繊維の上に石粒を圧着させたもので、シングル屋根とも言います。
紙のような薄さで軽くて柔らかく、折り曲げたり切断加工などが容易に可能です。
・柔軟性があり加工が容易
・カラフルでデザイン性がある
加工が容易なことから複雑な形状の屋根などにも対応しやすく、曲面にも葺くことが可能です。
細かいシート状になっており、グラデーションがかっていたり、シートごとに色味が少し異なるなど、
他とは異なったデザインの屋根に仕上がるでしょう。
元々アメリカの住宅で主流の屋根材であり、近年日本に来たものなので、
扱った事がない業者も多く、施工経験のある業者を探されることをおすすめします。
同様に、長期間日本の気候でアスファルトシングルを長期間使用された例はまだあまりありませんが、
考えられるメンテナンスはこちらです。
・カバー工法
石粒を吹きつけた屋根材なので、ある程度経年劣化で石粒が剥がれてしまう症状が発生します。
劣化が進むと下の繊維下地が見えてきてしまうので、
その場合、屋根塗装で石をしっかり止めつけるというメンテナンスがとられます。
アスファルトシングルも、瓦とは違い平坦な屋根材なので、
痛みがひどい場合はカバー工法がメインになるでしょう。
もしも下地まで劣化が進んでいた場合は、葺き替え工事も検討の範囲に入ります。
弊社では、アスファルトシングルの屋根のリフォームももちろん可能ですが、
他の屋根材から吹き替えやカバー工法をする際に、新しい屋根材の候補としてガルバリウム鋼板以外に使用されるパターンが多いです。
陸屋根
屋上のような平面の屋根を陸屋根と言います。
アパートやマンション、最近のデザイン性の高い住居などで使われる屋根であり、
他の屋根から陸屋根にしたい、陸屋根から他の屋根にしたい、というのは難しく、
新築の際に陸屋根を検討したり、陸屋根特有のメンテナンス方法などがあります
・室内を広くとれる
・雨漏りしやすい
陸屋根採用のメリットとしては何より屋上としてスペースを確保できることです。
三角屋根とは異なり、屋根裏が作れない分、1つの階の高さを確保したり、室内空間の確保が可能です。
逆に屋根裏という空気の層がないため、少々断熱性が劣る場合もあります。
また、基本的に平坦な屋根のため、排水のためのわずかな傾斜しかなく、水溜りができやすいです。
そこから劣化が進行し、雨漏りに繋がる可能性が高めです。
・防水工事
軽い割れ目などであれば、防水性のあるコーキングを充填することで補修する事ができます。
他にもひび割れが酷かったり、水ぶくれや剥がれなどが見られる場合には防水工事を行います。
ベランダなどでも行われるもので、いくつかパターンがありますが、
耐熱性に優れたウレタンなどの樹脂塗料を流し入れ塗装する方法や、
防水シートを敷き詰め、上から圧着させたりする工事方法があります。
まとめ
ここまでさまざまな屋根材と、考えられるメンテナンス方法についてご紹介してきました。
ご自身のお家の屋根材はどちらだったでしょうか?
日々多くのメーカーで新たな屋根材が研究されれいるので、
ここにはない屋根材を使用されている住宅もあるかもしれません。
メンテナンス方法も、地域や劣化状況によって変わります。
業者の見積もりをとられる場合はご相談し、決定の際にぜひ参考にしてみてください。