屋根の劣化や不具合は、施主様本人で確認することが難しく、気づかないうちに劣化や不具合が発生しているケースが多いです。
また、屋根の劣化や不具合は、訪問販売業者や悪徳業者からも指摘をされることが多く、業者トラブルに発展するケースも少なくありません。
そのため、屋根修理を検討するにあたって、自宅の屋根の修理方法や費用相場について理解しておくこと屋根修理で失敗しない秘訣です。
そこで、この記事では、屋根修理を検討されている施主様を対象に、屋根修理を始める前に最低限知っておくべき、屋根修理の基礎知識についてまとめました。
具体的な屋根材別の屋根修理の工法や費用相場、火災保険の申請条件など、屋根修理で失敗しないための事前知識について解説します。
屋根修理の専門業者の立場から、初心者の方にも分かりやすく解説しているので、是非、最後までお読み頂き、参考にして頂ければと思います。
屋根材別の屋根修理の種類と費用相場
屋根材には「スレート屋根」「瓦屋根」「トタン屋根」など種類がありますが、屋根の種類によって発生する劣化症状や不具合、屋根の修理方法が異なります。
まず始めに、屋根材の種類別の修理方法について見ていきましょう。
スレート屋根
スレート瓦はセメント質の屋根材で、塗装により防水性能を確立しています。現在の戸建て住宅で最も普及している屋根材です。
下記の表にスレート屋根修理の費用相場をまとめているのでまずは相場感を掴みましょう。
修理方捕 | 金額 |
スレートの差し替え | 1万円〜5万円 |
棟板金の交換工事 | 15万円〜30万円 |
屋根塗装 | 40万円〜80万円 |
屋根カバー工法 | 80万円〜150万円 |
スレート屋根の修理方法について、それぞれみていきましょう。
スレート瓦の差し替え
スレート瓦の差し替えとは、スレート瓦を交換する工事です。スレート瓦は、板厚5mmほどの薄い屋根材です。
そのため、経年劣化により屋根材が割れてしまうことがあります。
また、スレート瓦を固定している釘が錆びてしまい、スレート瓦が屋根から外れてしまうことがあります。
この状態を放置すると雨漏りの原因になるため、不具合が発生したスレート瓦を取り外し、新しいスレート瓦に交換します。
スレート瓦の差し替え工事は、屋根塗装の際に一緒にメンテナンスがされますが、スレート瓦の差し替え工事は応急処置的な感覚で施工されることが多いです。
スレート瓦の差し替え工事は「1万円~5万円」くらいが中心価格帯です。スレート屋根の棟板金の交換
屋根の棟(屋根のてっぺん)は、棟板金と呼ばれる金属製のカバーが取り付けられています。
この棟板金を交換する修理方法が、棟板金の交換工事です。棟板金は棟下地(下地板)に釘を打ち付けて固定されています。
しかし、台風や強風、経年劣化により釘が抜けてしまい、棟板金が「外れる」「飛ばされる」などの不具合が発生します。
その際は、一度、棟下地を含めて棟板金を撤去して、再度、棟を施工することで修理をします。
こちらも屋根塗装とセットでメンテナンスをすることが多いですが、単独で施工する場合、「15万円 ~30万円」が中心価格帯になります。
スレート屋根の屋根塗装
スレート瓦は塗装により防水性能を確立している屋根材であり、屋根の防水性能が低下すると脆くなり、「割れ」や「反り」などの屋根材本体の不具合に発展します。
そのため、10年に1度を目安にスレート瓦の防水性能を回復させるために屋根塗装を行います。
屋根塗装の際に、割れてしまったスレート瓦の差し替えや、棟板金の交換工事などを行います。
そうすることで、足場を有効活用できるので、費用対効果が高まります。
このように屋根塗装はスレート屋根の、総合的なメンテナンスの機会と理解しておきましょう。
屋根塗装は塗料のグレードにより価格が変動しますが、標準的に使用されるシリコン塗料の場合、40万円~80万円くらいが中心価格帯になります。
スレート屋根のカバー工法
スレート屋根のカバー工法とは、既存のスレート屋根の上に、ガルバリウム鋼板を被せる屋根のリフォーム工法です。
既存のスレート屋根を土台としてガルバリウム鋼板屋根を施工するため、屋根材の工程が短縮され、廃棄費用も発生しないことから、コストパフォーマンスに優れた屋根のリフォーム工法です。
スレート瓦の耐用年数は25年~30年と言われています。
そのため、築25年~30年を目安にカバー工法でガルバリウム鋼板に屋根材を張り替えるのがスレート屋根リフォームの一般的な流れです。屋根カバー工法は80万円~150万円が中心価格帯になります。
瓦屋根(日本瓦)
日本瓦は粘土を主原料とした屋根材で日本でもお馴染みの屋根材です。
別名、粘土瓦、陶器瓦とも呼ばれており、耐用年数が80年と非常に耐久性に優れた屋根材です。
屋根修理の費用相場を、下記の表にまとめたのでご覧ください。
修理方法 | 費用相場 |
瓦の差し替え | 3万円〜5万円 |
漆喰の詰め直し工事 | 20万円〜30万円 |
棟の取り直し工事 | 30万円〜50万円 |
瓦の葺き直し工事 | 40万円〜80万円 |
屋根の葺き替え工事 | 120万円〜200万円 |
それでは、それぞれの日本瓦屋根の修理方法について見ていきましょう。
瓦の差し替え
日本瓦は重量があり、経年劣化で「割れ」が生じることは滅多にありません。
しかし、地震や台風などで日本瓦が振動しするこで瓦が欠けてしまったり、割れてしまうことがあります。
このような劣化した瓦を、新しい瓦に交換する屋根の修理方法が、瓦の差し替え工事です。
瓦の「欠け」や「割れ」を訪問販売業者に指摘をされ、葺き替え工事などの全体的な工事を提案されたケースであっても、瓦の差し替え工事で修理ができる場合がほとんどです。
具体的な費用は差し替える瓦の枚数によりますが、「3万円~5万円」が中心価格帯となります。
漆喰の詰め直し工事
瓦屋根の棟部分に白い部材詰まっていますが、この白い部材は漆喰です。
瓦屋根の棟の内部には葺き土と呼ばれる粘土が詰まっており、この粘土が外に流出しないように漆喰で固めています。
この漆喰は経年劣化で黒く変色し、最終的に剥がれるようになります。
この古い漆喰を新しい漆喰に塗り直す工事が、漆喰の詰め直し工事です。
この漆喰の劣化も訪問販売に指摘がされやすい箇所であり、漆喰の詰め直し工事で修理ができる内容がほとんどです。
漆喰の詰め直し工事の中心価格帯は、20万円~30万円が中心価格帯になります。
棟の取り直し工事
棟の取り直し工事は、既存の棟瓦をいったん解体して、再度、棟瓦を組み直す工事です。
棟瓦の歪みや棟の土台となる葺き土の補充、漆喰の詰め直しも含めて、総合的に棟のメンテナンスを行うことができます。
漆喰が剥がれており、葺き土が外に流出しているケースや、地震や台風により、棟が歪んでしまっている場合に用いられることが多い修理方法です。
棟の取り直し工事は「30万円~50万円」が中心か中心価格帯になります。
瓦の葺き直し工事
瓦の葺き直し工事とは一旦、既存の日本瓦を撤去して、屋根内部の躯体(構造)の補修、防水シートの交換後、再度、瓦を組み直す修理方法です。
日本瓦は耐久性に優れた屋根材で、耐用年数も80年と非常に長期的です。
そのため、経年劣化理由に屋根材を新しくする必要はありません。
しかし、屋根の防水性能を確立している防水シートは、40年~50年で劣化して、「破れ」や「縮れ」が発生するようになります。
そうすると、雨漏りが発生するため、定期的に防水シートを交換する必要があります。
その際に、既存の日本瓦を再利用する葺き直し工事により、メンテナンスを行います。
瓦の葺き直し工事では、瓦の歪みや棟の劣化も含めて総合的なメンテナンスができます。
瓦の葺き直し工事は「40万円~80万円」が中心価格帯になります。瓦の葺き替え工事
屋根の葺き替え工事は、屋根材の日本瓦を新しく張り替える工事です。
先ほども少し触れましたが、日本瓦は経年劣化を理由に新しく屋根材を交換する必要はありません。
しかし、日本瓦は重量があり、建物への負担が大きいことから、耐震リフォームとして軽量なガルバリウム鋼板に、屋根材を張り替える事例も近年増えています。
日本瓦屋根の葺き替え工事は「120万円~200万円」が中心価格帯です。トタン屋根
トタンは金属製の屋根材で、正式名所は亜鉛メッキ合板と言います。
表面の亜鉛メッキが芯材の鉄よりも早く酸化(錆びる)ことで芯材を保護している屋根材です。
亜鉛メッキ自体には防水能力は無く、塗装により防水性能が確立しています。
トタン屋根の構造は瓦棒葺きが主流ですが、瓦棒葺きは排水性に優れており、下屋根などの勾配が緩やかな箇所で使用されることが多いです。
まずは、トタン屋根の修理方法と費用相場を下記の表にまとめたのでご覧ください。
修理方法 | 費用相場 |
屋根塗装工事 | 20万円〜50万円 |
屋根葺き替え工事 | 80万円〜120万円 |
それでは、それぞれの工法を具体的に見ていきましょう。
トタン屋根の屋根塗装
トタンは塗装により防水性能を確立しており、5年~8年を目安に初期塗装の防水性能が低下し始めます。
そのため、8年くらいを目安に再塗装を行うのが一般的です。
トタンは錆の侵食が早く、錆を放置するとすぐに穴が空いてしまいます。
塗装ではメンテナンスができない状況になるので注意が必要です。
トタンの屋根塗装は「20万円~50万円」くらいが中心価格帯になります。トタンは金属屋根であり塗料が密着しづらいため、比較的安価なウレタン塗料が使用されます。
そのため、トタン屋根はスレート屋根の屋根塗装と比べて施工単価は安くなる傾向にあります。
トタン屋根の葺き替え工事
トタンの屋根の葺き替え工事とは既存のトタン屋根を撤去して、新しいトタンに張り替えるリフォーム工法です。
トタンの耐用年数25年前後と言われています。
現在普及しているトタン屋根のほとんどが耐用年数が経過しており、トタン屋根の修理方法として葺き替え工事が主流となっています。
トタン屋根の葺き替え工事の中心価格帯は「80万円~120万円」が中心価格帯です。屋根修理の火災保険
屋根修理は「台風で棟板金が外れてしまった」「瓦がズレているのに気がついた」など、具体的に不具合が発生してから修理を検討する方が多いと思います。
このような「棟板金の破損」や「瓦の不具合」などは台風や強風、雪などの自然災害が原因となっている場合が多いです。
台風や強風などの自然災害が原因となってい場合、火災保険で屋根の修理ができます。火災保険には「風災」「雪災」「雹災」も保証対象となっており、台風や強風、雪が原因で屋根に不具合が発生した場合、火災保険を申請できます。
ただし、火災保険の適用範囲は原状回復までであり、リフォーム工事全体にはできないケースが多いです。
屋根修理における火災保険の申請は業者と二人三脚で進めていくため、お問い合わせのタイミングで火災保険の利用の意向を相談してみることをお勧めします。
屋根修理の詐欺に注意
施主様から屋根修理のご相談を頂く際に、「訪問販売業者に瓦のズレを指摘された」「屋根の葺き替え工事を提案されたけど、本当にそんな大がかりの工事は必要なの?」というように、訪問販売業者に屋根の劣化を指摘されて、弊社にご相談頂く事例が多いです。
確かに屋根は経年劣化により必ず劣化をするもので、定期的にメンテナンスが必要になるため、訪問販売業者の指摘も間違っているわけではありません。
しかし、瓦の差し替え工事で修理ができる内容でも、高額な屋根の葺き替え工事を提案されるなど「詐欺」が横行しているのも事実です。
そのため、まず屋根の劣化を指摘してくる、訪問販売業者の提案は鵜呑みにしないことが重要です。
「このままだと雨漏りがしますよ!」「修理をしないと大変なことになりますよ」と言われると不安に感じる施主様も多いですが、信頼できる屋根修理の専門業者にしっかりと現地調査をしてもらうことが重要です。
まとめ
いかがでしたか?屋根修理の種類と費用相場について、理解できましたか?
屋根修理は屋根材や劣化症状によって、最適な修理方法が異なります。
そのため、事前に自宅に合わせた屋根修理の方法と費用相場を理解しておくことが、屋根修理で失敗しない秘訣です。