瓦屋根

瓦の種類とメンテナンス方法をプロが徹底解説

「瓦」と聞いて真っ先に「日本瓦」を思い浮かべる人が多いと思います。

しかし、日本瓦と同じ形状であってもセメント瓦やかわらUなど種類が様々です。

また、耐用年数やメンテナンス方法も異なるために、瓦屋根の修理やリフォームを検討する際は、まずは自宅の瓦の種類や特徴を理解して、最適な工法でメンテナンスを行うことが重要です。

そこで、記事ではこれから屋根修理やリフォームを検討されている方を対象に、瓦に関する基礎知識について具体的に解説します。

具体的に、瓦の種類を始め、修理・リフォーム工法などをお伝えしています。

これから屋根の修理やリフォームを行う方にとって役に立つ内容になるため、是非、最後まで読み頂き参考にしてもらえればと思います。

瓦屋根の構造と特徴

日本瓦の構造

まず始めに、瓦の屋根の構造と特徴について理解を深めましょう。

瓦屋根は大きく分類すると、棟部と平部に分けられます。それぞれ、具体的に見ていきましょ

棟部

屋根の三角形のてっぺんの線を「棟」と言います。

棟は棟瓦を積み上げて防水処理をしています。

瓦屋根の棟の内部には葺き土と呼ばれる粘土が詰まっていますが、この棟の内部の葺き土が棟の外に流出しないように固めているのが漆喰です。

棟部は経年劣化で棟瓦がズレたり、漆喰が剥がれるなどの劣化症状が発生します。

漆喰が剥がれると棟の内部の葺き土が流出してしまい棟に歪みが生じます。

地震で倒壊する可能性が高いので定期的なメンテナンスが必要です。

平部

平部は屋根面にあたる箇所です。

瓦は本体が設置されています。瓦は屋根に固定されておらず、瓦同士をはめ合わせて固定されています。

そのため、地震で瓦がズレる不具合が多いです。

また瓦は屋根は瓦と防水シートの2層構造で防水性を確立しています。

これはどの屋根材でも同じですが、屋根の二次防水の防水シートが劣化します。

防水シートが劣化すると雨漏りの原因になるため定期的にメンテナナンスが必要です。

瓦の種類と特徴

瓦には「日本瓦」「セメント瓦」「防災瓦」などが代表的です。

その中で、日本瓦はもっとも普及率が高く、定着しています。また、日本瓦と似た形状ですが、セメント瓦や防災瓦、モニエル瓦やかわらUなどの種類があります。

ここから瓦の種類と特徴について具体的に見ていきましょう。

日本瓦

日本瓦は別名「粘土瓦」「陶器瓦」など呼ばれており、粘土を主原料とした瓦です。

粘土を主原料としているため、耐用年数が80年~100年と非常に耐久性に優れている瓦です。

メンテナンスフリーの屋根材でもあり、屋根塗装などのメンテナンスが必要ありません。

しかし、重量が非常に重いため、耐震性能が低いのがデメリットでもあります。

メリット
・耐久性に優れ得ている
・断熱性が高い
・遮音性が高い
・和風住宅に似合う
デメリット
・施工費用が高額
・耐震性が低い
補足情報
日本瓦には釉薬瓦(陶器瓦)と無釉瓦(いぶし瓦、素焼瓦)の2つの種類があります。釉薬瓦は釉薬が塗られた瓦で食器のように表面がツルツルしているのが特徴です。一方で、無釉瓦は瓦を焼き上げる際に、燻すことで耐久性を高めています。無釉薬瓦は経年でムラが出ますが、それが味になります。主に日本家屋で使用されています。

セメント瓦

セメント瓦はセメントを主原料とした瓦です。形状が日本瓦と似ており素人の方には見分けがつかないことがありますが、日本瓦と異なり塗装により防水性を確立しています。

そのため、塗装の防水性能が低下する10年前後を目安に再塗装を行うこ必要があります。

耐用年数は40年前後と日本瓦と比べて比較的短いですが、屋根材の中では耐久性に優れている部類に入ります。日本瓦と同様に重量があるため、耐震性が低いのデメリットです。

メリット
・耐久性に優れ得ている
・断熱性が高い
・遮音性が高い
・施工費用が比較的安価
デメリット
・再塗装が必要
・耐震性が低い

防災瓦

防災瓦

防災瓦は従来の日本瓦よりも耐震性を強化した日本瓦です。ロックアームと呼ばれる工法で瓦同士の連結を強化していることが特徴です。

また、日本瓦と比べて非常に軽量なため震性能が高いのが特徴です。

これまでガルバリウム鋼板など軽量な屋根材に葺き替えることで、耐震リフォームを実現していました。

しかし、和風住宅をガルバリウム鋼板に葺き替えてしまうと、建物の美観性が損なわれてしまうことに抵抗を感じる施主様も多くいらっしゃいました。

一方で、防災瓦が登場したことで和風住宅の美観性を損なうことなく、建物の耐震性能も向上できるようになりました。

施工価格は日本瓦よりも若干高額になりますが、非常に耐久性に優れており付加価値が高い屋根材として近年注目されています。

メリット
・耐久性に優れ得ている
・耐震性に優れている
・断熱性が高い
・遮音性が高い
・和風住宅の美観を損なわない
デメリット
・耐久性に優れ得ている
・施工費用が高い

モニエル瓦

モニエル瓦

モニエル瓦は1970年代~1980年代に新築住宅で人気を博した瓦です。

コンクリート瓦で2010年に販売が終了したため現在では流通していない屋根材です。

現在、築30年~50年の建物の屋根に乗っていることが多い屋根材です。

モニエル瓦は再塗装が必要な瓦で、セメント瓦と同様に10年前後を目安に再塗装が必要です。

モニエル瓦の塗装は特殊でスラリーと呼ばれる初期塗装を剥がしてからの施工になります。

しかし、セメント瓦とほとんど形状が同じため、セメント瓦と間違えて塗装をしてしまったり、不慣れな業者が屋根塗装をしてしまい、施工後すぐに塗装が剥がれるなどの施工不良が多い屋根材でもあります。

モニエル瓦とセメント瓦は瓦の断面で見極めます。

セメント瓦と比べて、モニエル瓦は屋根材の断面がザラついているのが特徴です。

現在では販売終了しており、屋根材選びの対象になることはありませんが、まだまだ多くの戸建て住宅にモニエル瓦が普及しているので、メンテナンスの際に確認しておくと安心です。

かわらU

かわらU

かわらUは1975年~1990年まで屋根リフォームに用いられていた屋根材です。

瓦のような形状をしていますが、瓦ではなく、スレート材です。

スレート材とセメントに繊維素材を混ぜて板状に加工した素材です。

スレートの材料として使用されるセメントと繊維素材の密着性を高めるために、アスベストが含有されているということで問題になった製品でもあります。

また、ノンアスベストのかわらUは、経年劣化で屋根材がボロボロに剥がれるなどの不具合が多発しています。

日本瓦と形状が似ているため、日本瓦と間違えてしまっている施主様も多いですが、基本的にかわらUのリフォームは葺き替え工事による対応になります。

現在、生産も終了しており、基本的に在庫もない状態のため部分補修による修理も対応できない状態です。

瓦の修理・リフォーム

瓦は劣化症状や不具合の状態によって最適なリフォーム工法が異なります。ここからは瓦の修理方法、リフォーム工法について具体的について詳しく解説しています。

瓦の差し替え

瓦の差し替えは劣化した瓦を新しい瓦に交換する工事です。日本瓦やセメント瓦は耐久性に優れて屋根材ですが、地震や台風で瓦が振動することで割れてしまうことがあります。

このような割れてしまった瓦を新しい瓦に交換する工事が瓦の差し替え工事です。瓦の差し替え工事は3万円~5万円が中心価格帯になります。

漆喰の詰め直し工事

漆喰の詰め直し工事は劣化した棟の漆喰を新しい漆喰に塗り直す工事です。

冒頭でも少し触れましたが、棟の内部に葺き土(粘土)が詰まっています。

この葺き土が外に流出しないように固めているのが漆喰です。漆喰は経年劣化により隙間が生じるようになり、剥がれるようになります。

漆喰が剥がれてしまうと、棟の葺き土が外に流出してしまい、棟の内部が空洞になってしまいます。

そうすると棟が歪んだり、倒壊する恐れがあるため、漆喰が劣化したタイミングで新しく漆喰を塗り替える必要があります。

漆喰の詰め直し工事は一度、既存の漆喰を撤去してから新しい漆喰を詰め直します。漆喰の詰め直し工事は20万円~30万円が中心価格帯になります。

棟の取り直し工事

棟の取り直し工事は既存の棟を解体して、再度、棟を組み直す工事です。

地震や経年劣化で棟が歪んでしまった場合や、全体的に棟瓦がズレている場合などに施工されるメンテナンス方法です。

棟の土台には葺き土(粘土)が使用されていましたが、現在では南蛮漆喰が使用されます。

南蛮漆喰とは漆喰に樹脂などを混合した漆喰で葺き土よりも耐久性に優れているのが特徴です。

また、現在では棟の内部に角材(芯材)を通すことで棟の倒壊を予防する強化棟も普及しています。

ラバーロック(瓦止め)工事

ラバーロック工法(瓦止め)工事は瓦同士をコーキングで接着することで瓦の同士の連結を強化するリフォーム工法です。

瓦同士の連結を強化することで、瓦がズレにくくなるため、地震による棟の倒壊や瓦の落下など防止することができます。

また、コーキングえ瓦同士を連結させることで、屋根材の隙間が少なくなり、屋根の防水性能が高まります。

特に、日本瓦は構造的に屋根の内部に雨水が侵入すしやすいため、ラバーロック工法は効果的です。20万円~30万円が中心価格帯になります。

瓦の葺き直し工事

瓦の葺き直し工事は既存の瓦を解体して、屋根内部の防水シートを交換後、再度、解体した瓦を戻す工事です。

日本瓦の耐久性を活かしたリフォーム工法になります。

日本瓦は耐用年数が80年前後と非常に耐久性優れています。

しかし、屋根内部の防水シートは経年劣化により「破れ」や「縮れ」が発生します。

防水シートが劣化すると、雨漏り原因になるため、40年前後を目安に防水シートを交換する必要があります。

また、屋根の棟の漆喰も劣化します。その際に、瓦の葺き直し工事を行うことで瓦屋根全体のメンテナンスを行います。

葺き直し工事はあくまでも日本瓦で施工されるリフォーム工法であり、その他のセメント瓦やモニエル瓦、かわらUは葺き替え工事によるメンテナンスが一般的です。

瓦の葺き替え工事

瓦の葺き替え工事は、屋根材全体を新しい瓦に交換するリフォーム工法です。

日本瓦屋根では耐震リフォームの一環でガルバリウム鋼板に葺き替えるケースが多いです。

また、セメント瓦やモニエル瓦、かわらUでは屋根材に耐用年数が経過した40年前後のタイミングでガルバリウム鋼板に葺き替えるケースが多いです。

屋根の葺き替え工事ではガルバリルム鋼板の他に、アスファルトシングルやスレート瓦など葺き替える屋根材に制限はありませんが、耐震性と耐久性、施工単価のなどの屋根材の性能を総合的に判断するとガルバリウム鋼板がもっとも費用対効果が高いです。

屋根の葺き替え工事は使用する屋根材の種類にもよりますが、120万円~200万円が中心価格帯になります。

屋根塗装(セメント瓦・モニエル瓦)

セメント瓦はやモニエル瓦は塗装に防水性を確立している屋根材です。

そのため、塗装の防水性能が低下する10年前後を目安に、再塗装を行い屋根材の防水性を回復させる必要があります。

コンクリート瓦のモニエル瓦は初期塗装で特殊な塗装がされているため、入念な下地調整が必要です。モニエル瓦はスラリーと呼ばれる特殊な塗膜が形成されています。

このスラリーは高圧洗浄では完全に除去することは難しく、最終的にあ職人が瓦を一枚一枚チェックしてスラリーを削り落とす必要があります。

モニエル瓦の塗装の際は、モニエル瓦の塗装に施工実績がある業者に依頼すると安心です。

最後に

いかがでしたか?瓦について理解できましたか?

瓦といえば日本瓦をイメージする方が多いですが、実は瓦にはセメント瓦やもモニエル瓦などの様々な種類があることがご理解頂けたかと思います。

また、瓦の種類によって必要なメンテナンスやリフォーム工法が異なります。

そのため、瓦屋根をリフォームする際は、自宅の瓦の種類をしっかりと理解して適切なリフォーム工法でメンテナンスをすることが重要です。

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